現在は人工培養が可能となったため、免疫力を向上させ老化を防止してくれるものとしてサプリメントや漢方などに使用され、注目を集めています。
冬虫夏草とは、バッカク菌科に属するキノコの一種です。昆虫に寄生して養分を吸収し、子実体[※1]を伸ばしたものです。冬は虫の姿で過ごし、夏になると草になることから冬虫夏草と名付けられました。
世界中には約300種類の冬虫夏草があるといわれており、その内名前が付けられているものは226種で、その3分の2が日本で発見されたものです。
中国で冬虫夏草というと、チベットや四川、雲南、西康、ネパール、ヒマラヤなどの3,000〜4,000ⅿ級の高山帯に6〜8月頃発生する、コウモリガの幼虫に寄生したキノコだけを指します。
冬虫夏草の寄生する宿主には、鱗翅目(りんしもく:チョウやガの仲間)の幼虫や鞘翅目(こうちゅうもく:コガネムシやテッポウムシなど)の幼虫や成虫が多く、その他にハチやアリ、セミ、トンボ、ダニなども知られています。
中国では、紀元前の時代にキノコは植物として考えられていたため「虫草」と表現されたといわれています。
セミに寄生する冬虫夏草はよく目につき、あまり珍しくないということからやや価値が低くみられていたといわれていますが、コウモリガの幼虫に寄生する冬虫夏草はとても珍しく、高値で取り引きされていました。現在は人工培養が可能となったため、安定供給が可能になり手に入りやすくなりました。
●冬虫夏草の歴史
冬虫夏草は中国では殷の時代から滋養強壮、不老長寿のための食材として有名でした。
秦の始皇帝は、不老長寿の薬を求めた歴史的人物としてよく知られています。中でも焼酎につけた冬虫夏草を金一匁(きんいちもんめ)という高価な金額と交換した話や、美女の場貴妃が若返りの薬として飲んでいた話が伝えられています。冬虫夏草は滋養強壮の他に、アヘン中毒の解毒剤としても使用されていたことがあります。
また、中国女子陸上チームの馬軍団の連続優勝の陰に冬虫夏草があると報道され、スポーツ関係者の注目を集めたこともありました。
冬虫夏草の名が世界的に知られたのは1722年といわれており、日本には1728年に寧波(にんぽ)の船主である尹心宜が長崎に持ち込んだことがきっかけで入ってきたといわれています。1768年に青木昆陽が書いた『昆陽漫録補』に冬虫夏草のことが記載されています。
明治時代に入ると菌学者である南方熊楠によって冬虫夏草の研究が進められました。近年では、冬虫夏草の様々な働きが徐々に明らかにされてきており、注目を集めています。
●冬虫夏草に含まれる栄養素
冬虫夏草には、滋養強壮の作用を持つコルディセピンや免疫細胞を活性化させるβ-D-グルカンが豊富に含まれています。その他にも利尿作用やカルシウム拮抗剤[※4]としての働きも持つD-マンニトールや、血中のコレステロール値を低下させる働きのあるキチン・キトサンという食物繊維の一種も含まれています。
[※1:子実体とは、きのこの上の部分、つまり傘と太い柄のような部分のことです。]
[※2:子嚢菌類とは、傘のないキノコの総称です。傘のついた種類は坦子菌類と呼ばれます。]
[※3:活物寄生菌とは、マツタケや冬虫夏草のように生きている植物や動物に寄生する菌のことです。他にはシイタケのように死んでいる植物に寄生している死物活性菌や、腐った動物の死骸や植物に寄生している腐食寄生菌があります。]
[※4:カルシウム拮抗剤とは、細胞内へカルシウムイオンを流入する働きを持つカルシウムチャネルに結合し、カルシウムの流入を拮抗(阻害)することにより、血管拡張作用を示す薬剤のことです。]
●骨粗しょう症を予防する効果
カルシウムは骨の材料になるだけでなく、血液内で様々な生理作用に関係しています。血中のカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出すことにより血中のカルシウム濃度が一定に保たれています。
冬虫夏草にはカルシウム自体も含まれています。また、カルシウムと協力して働く他のミネラルも豊富に含まれているため、相乗効果で健康に役立つと考えられています。
●ストレスをやわらげる効果
冬虫夏草に含まれているメラトニンには、体内時計を整え自然な睡眠を導くことをサポートする働きがあります。メラトニンは、脳から分泌されるホルモンの一種で自然な眠りを導きますが、加齢や生活リズムの乱れにより正常に分泌できなくなったり、分泌量が減少します。メラトニンを補うことにより体内時計が正常になり、質の良い睡眠をとることができストレスを感じにくくなるといわれています。
また脳神経伝達系であるアドレナリン系やドーパミン系神経にはたらきかけ、抗うつ作用を示すことも報告されており、抗ストレス効果や抗うつ効果が期待されています。【6】
[※5:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※6:腫瘍細胞とは、組織、細胞が生体内の制御に反して過剰に増殖することによってできる細胞組織のことです。]




