「食制限」「食事規定」についての備忘録(メモメモ)
「ペスクタリアン」だと言っているけど意味がわからないとか、好きな芸能人が「ビーガン」だとか、飲食店で「ハラール認証」というサインが貼ってあるけどよくわからない????
勘違いされやすいのですが、食制限や規定は「好き嫌い」でやっているのではありません。もちろん好き嫌いで決まったものを食べない方もたくさんいますが、それとはちょっと違います。
宗教的な理由、道徳的な理由、健康的な理由、人とその制限によって、理由は異なります。
★ベジタリアン(vegetarian)
ベジタリアン(vegetarian)とは、「菜食主義者」です。肉と魚は一切食べません。しかし、牛乳や卵などは食べます。
ベジタリアンになる理由はいろいろありますが、アメリカでは道徳的な理由が多いでしょう。動物たちの大事な命を守りたい、自然と環境を守りたい、などですね。また、野菜をたくさん食べた方が健康的やダイエットにいいからということでベジタリアンになる人も結構いますね。
ベジタリアンは多くの国でかなり一般的になっていて、多くの飲食店でベジタリアンのための肉なしメニューも用意してあります。ドイツ・イタリアン・イギリス・スェーデン・アメリカなどの各国では人口の3〜10パーセントがベジタリアンで、宗教的な理由でベジタリアンになる方が多いインドでは人口の3割以上もベジタリアンだと言われています。
★ペスクタリアン(pescatarian)
ペスクタリアン(pescatarian)とは、肉は一切食べないで、魚介類を食べる食制限です。牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉など、「肉」は一切食べません。しかし、魚類・貝類・カニなどシーフード全般は食べます。
ペスクタリアンになる理由によくあるのは、ダイエットや健康のためです。肉を減らしたい、ベジタリアンになりたいけど一気に動物性食品を摂らないのは栄養バランスをとるのが難しいので、まずペスクタリアンになってから「少しずつベジタリアンな食事に近づいていきたい!」などの理由です。
ちなみに pescatarian の「pesca」はイタリア語の「pesce」(魚)という意味から取っていて、pescatarian だけではなく pescetarian というスペルも使われています。
★ビーガン(vegan)
ビーガン(vegan)とは、「完全菜食主義者」であって、ベジタリアンと違って肉や魚を食べないだけではなく、動物性食品は一切食べません。
肉類や魚介類はもちろん、牛乳、乳製品、卵、蜂蜜、多くのゼリーなども全く食べません。 多くの vegan は食事だけではなく、動物由来のものも使わないので、皮(レザー)や本物のダウン(鳥の羽)は使わないし、動物にテストして造られた化粧品なども使いません。
ビーガンになる理由も道徳的な理由が多くて、人間は動物を食べなくても健康的に生きられるから「おいしい」というわがままな理由で他の生き物を殺したくない、という考えなので食事制限というよりライフスタイルそのものです
★ハラール(Halal)
ハラールは宗教的な食事の規定です。誰でも従って構いませんが、基本は「イスラム教」を信仰する方(ムスリムの方)が守る食制限です。
ハラールとは、イスラム法で許可されている食材や料理のことです。非ハラール(食べてはいけない)ものは「ハラーム」または「ノンハラール」と言います。
食べられないものの定番は「豚肉」です。豚肉そのものはもちろん、豚骨スープや豚を使用している料理が全般的にだめです。お酒も禁じられているので、多くのイスラム教の方はお酒は一切飲めません。
肉類で完全に禁じられているのは豚肉だけですが、他の肉も動物の殺し方、血液の抜き方、調理の仕方などによって制限があります。「ハラール認証」と書いてある飲食店や商品はこれにならっているので大丈夫ということです。
ムスリムの方と一緒に食事に行く場合やお店をお勧めする場合、事前に確認した方が安心です。日本にいるムスリムの方の多くはマレーシアから来ていますが、中東やヨーロッパなどからのムスリムの観光客も増えているようです。
★コーシャー(Kosher)
コーシャー(日本語ではカーシェールともいう)は宗教的な食制限です。もちろん誰でも従っていいですが、基本的に「ユダヤ教」を信仰する方が守る食制限です。
コーシャーとはユダヤ教で定める食べ物に関する規定です。元々信者のための安全な食事のガイドラインだったので、ハラールに少し似ています。ユダヤ教の聖書 Torah(トーラー)に何を食べていいかが細かく書いてあります。
トーラーによると、基本的に「豚肉」「貝類」「甲殻類」が食べられなくて、肉も下準備の仕方によります(血液の抜き方などが大事です)。牛肉と乳製品も食べることが禁じられています。他にも「ラクダ」「ウサギ」「コウモリ」が禁じられているなどいろいろあります。
アメリカでは一般的なスーパーでも「コーシャー」の食品が売られていて、よく目印のシールも貼ってあります。ユダヤ教以外にも「安全性」や「健康的」な理由でコーシャーのものを好む方がいます。
しかし、ユダヤ教の方が全員コーシャーの食制限に従うわけではないので、こちらも先ほどのハラールと同様に、ユダヤ教の友達がいても、一緒にご飯を食べに行く前に本人がコーシャーかどうかを確認した方がいいですね。
★グルテンフリー(Gluten Free)
グルテンフリーダイエットは聞いたことありますか?小麦を食べないダイエットで、最近アメリカでも日本でも人気なのですが、元々はやせるための方法ではありませんでした。
小麦・大麦・ライ麦などに入っている「グルテン」というタンパク質に対して体がネガティブに反応することで起こる、「セリアック病」という自己免疫疾患があります。この病気の症状悪化を防ぐために「グルテンフリー」な食生活にします。
海外のスーパーでは、この病気で苦しんでいる方々のために「グルテンフリー」の食品を揃えるお店が増え、後に「ダイエットのため」にグルテンフリーの食品を選択する層も出てきました。アメリカではレストランやファストフードチェーン店でもよく見かけるようになってきました。
注意しなければならないのは、この食制限を取り入れているのがただのダイエットなのか、病気のためなのか、という点です。ただ健康のためなら少しは食べてもいいかもしれませんが、病気のためのグルテンフリーならそれを徹底的に守らなくてはならないので、気をつけましょう。海外の方から「グルテンフリー」の食制限があると言われたら、まずそれを確認しましょう!
★食物アレルギー(Food allergy)
ご存じの通り、アレルギーとは自分の体の免疫がウイルスや毒ではないものに対して間違って反応してしまうことです。Food allergyはいろいろありますが、よく聞くのが卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、そば、果物などですね。
食物アレルギーの度合いは人によることを覚えておくといいですね。アレルギーがひどい方は cross contamination(相互汚染)がとても心配で、例えば、ピーナッツアレルギーがひどい方の場合、ピーナッツ入りのケーキを切ったナイフを使って、別のケーキ(ピーナッツ無し)を切ることもダメ、ということです。
簡単にまとめると
ペスクタリアン:基本的「肉」は食べないですが、牛乳や卵、そして魚類全般は食べる
ベジタリアン:「菜食主義者」、肉や魚類が食べない、でも牛乳や卵は食べる
ビーガン(ヴィーガン):動物製品は一切食べない、肉/魚類はもちろん、動物から来ている牛乳、卵、ハチミツなども食べない
ハラール:イスラム教の食事に対しての規定。豚肉は食べない、他の肉なども準備/調理の仕方によります。お酒も飲まない。
コーシャー:ユダヤ教の食事に対しての規定。豚肉は食べない、他の肉なども準備/調理の仕方によります。カニや貝などのシーフードも一部食べない。
グルテンフリー:小麦などの麦にあるタンパク質「グルテン」を食べない食制限。セリアック病の病気でやらなければいけない人も、ただダイエットのためにやる人もいます。
食物アレルギー:食物アレルギー、深刻さはひとそれぞれなので相互汚染も気をつけなければならない場合がある