2024年07月08日

老化・寿命研究の第一人者、ワシントン大学の今井眞一郎 教授A

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NMNを選ぶときのポイント

−−Aでは、すでにサプリメントとして飲んでいる方も多いNMNについて選び方のポイントを伺えればと思います。

今井:NMNを経口摂取する際にまず確認したいのが、製造法です。化学合成法なのか酵素法なのか酵母法なのかをチェックして、その上で現時点では発酵法か酵母法で作ったものを選ぶのが良いと思います。ただ、化学合成法でも非常に高品質のものが出来てきているので、生体が必要とするベータ型のNMNが純粋に含まれていることを確認できれば、化学合成品でも大丈夫でしょう。

また、どこで作っているかの確認も大事です。海外製品でも高品質の製品を作っている会社もありますので、情報をきちんと開示してくれる会社のものを選んだほうがいいと思います。

純度については、最近はほとんどが98%以上の純度をうたっていますが、どんな不純物が混ざっているかを確認しましょう。発酵法や酵母法で作っていれば生体に存在しないような不純物が入る可能性はほとんどありません。通常は入っているとしたらニコチンアミドくらいなのですが、これはビタミンB3なので問題ありません。

あとはどんな試験をしたのかという安全性のチェックですね。「医師が推奨」という広告も見かけますが、本当にNMNのことをわかって話している医師は少ないと個人的には感じます。

いずれにしても、製品を販売している会社に直接問い合わせて、これらの情報について聞いてみるのが一番良いと思います。そこできちんと対応してくれる会社は、良心的であり、製品の品質に自信があるのだと思えるからです。


●日本が幸せな健康長寿社会を実現する成功例に

−−セミナーでもNMNは超高齢化社会の問題を解決する方法の一つになり得るというお話がありました。NMNを一過性の流行で終わらせないために大事だと思うことを改めてお聞かせください。


今井:まずは正確な知識ですね。消費者が上記で述べたような点をチェックして商品を選ぶことも大事ですが、NMNを製造・販売する企業やメディアがエビンデンスに基づいた正確な情報を丁寧に発信することが求められます。


また、値段がもう少しリーズナブルなレンジに落ちるといいですね。NMNが登場した当時よりもだいぶ安価にはなりましたが、もう一歩というところでしょうか。


最近ではウェブサイトやYouTubeなどでNMNについて言及しているものも多数見かけるようになりましたが、そこで語られている知識は伝聞のようなものが多く、かなり不正確な情報が含まれています。ですから、NMNの研究や開発に実績のある研究者や医師からの直接の情報をしっかりと入手することが大事です。


−−セミナーでは日本でNMNやeNAMPTを開発することが大事とおっしゃっていました。


今井:日本がNMNやeNAMPTを用いた科学の力で健康長寿社会を実現する成功例を作って世界に発信することが大事です。経済的にも世界での日本の存在感が落ちてきている中で「日本はこんな方法で健康長寿社会を実現したのか」と言われるようになることが理想です。外国で開発すると日本が技術料を支払うことになってしまい本末転倒です。基幹技術は日本の中で開発することが大事です。


−−毎回のインタビューでも強調されているように、医療費の高騰を抑えるためにも「予防に尽きる」ということでしょうか。


今井:まさにその通りです。高騰する医療費を抑えるには、個々の疾患の治療も大事ではありますが、予防が唯一の解決策です。「予防医学」という言葉もだいぶ広まってきましたが、医師でさえその具体的な解決方法は手探りの状況です。日本の未来のためにも具体的で確実に効果がある予防の方法が求められています。そういう意味でもNMNやeNAMPTは期待できると思います。


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2024年07月07日

老化・寿命研究の第一人者、ワシントン大学の今井眞一郎 教授@

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36年以上にわたり老化・寿命研究の最先端を牽引してきた、ワシントン大学の今井眞一郎(いまい・しんいちろう )卓越教授。2023年8月にはワシントン大学から、テオドール&バーサ・ブライアン卓越教授(環境医学)の称号※を授与され、その研究に世界から熱い視線が注がれています。

このたび、「臓器間コミュニケーション」に関する重要な発見に関する論文を発表した今井卓越教授のインタビュー


●視床下部の特別な神経細胞を同定…明らかになった臓器間コミュニケーション

−−昨年12月に東京都内で開催されたセミナーでも「視床下部背内側核(DMH)に存在する特定の神経細胞群が、視床下部と白色脂肪組織の間でコミュニケーションをし、eNAMPTの分泌を促し、老化と寿命を制御していることが明らかになった」と発表されていました。今回、発表された研究内容のポイントを詳しくお聞かせください。


今井眞一郎卓越教授(以下、今井):視床下部の特定の場所「DMH」にある特別な「Ppp1r17神経細胞」を新たに同定し、この神経細胞が白色脂肪とコミュニケーションを取ることによって脂肪組織の機能を保ち、それによって老化・寿命の制御に重要な役割を果たしていることが分かりました。


特に今回、老齢マウスにおいてPpp1r17神経細胞に遺伝学的な操作を行い、神経細胞の働きを活性化したところ、eNAMPTの分泌が亢進し、マウスの老化が有意に遅れ、寿命が延長しました。


これは、Ppp1r17神経細胞を刺激すると、脂肪組織の中に張り巡らされている交感神経系を通じてeNAMPT (細胞外に分泌されるNAMPT)が分泌されることによって起こります。eNAMPTはNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド/生命活動に必須の物質)の合成に重要な酵素であり、これがDMHにいってNADを上昇させて神経細胞を活性化するフィードバックループができている、と考えられます。


視床下部のPpp1r17神経細胞と脂肪組織のフィードバックを保つこと、それが今回のテーマの「臓器間コミュニケーションを高めて老化・長寿を実現する」ということになります。


NMNでも、DMHのNADは高まります。一方で、NMNを作り出す酵素・eNAMPTを高めてもDMHのNADが高まることがわかっています。


−−eNAMPTを高めるというのは?


今井:例えば、まず運動です。運動すると骨格筋の中のNAMPTの量、また血中のeNAMPTの量が増えます。ヒトでもマウスでも増えます。運動は明らかにeNAMPTを増やす効果があります。ただ、運動は健康寿命を伸ばす効果はあるのですが、絶対寿命を伸ばす効果はありません。運動することでフィードバックループがうまく回るようになるのですが、そのループを働かせ続けるには、おそらく別の神経細胞を健康に保つ努力が必要です。仮説ですがNMNはそういう働きを持っている可能性があると思っています。NMNは脳の中枢で重要な働きをしていると考えられますが、まだ研究の段階です。次の機会くらいに、NMNが脳の中でどんなことをしているかが発表できるかもしれません


ヒトへの応用は? 自身のeNAMPTを用いる療法の開発が進行中

−−若いマウスからeNAMPTを含んでいる細胞外小胞を取り出して(eNAMPT内包EV)老齢マウスに注射すると、抗老化作用が認められて寿命も伸びるというお話もあり、ヒトへの応用も数年のうちには実現するだろうということでしたね。

今井:年を重ねていくうちに血中のeNAMPTの量が減るから補充する、という考え方です。ヒトの場合は、ご本人の血液を頂いて、そこから血漿を分離してeNAMPT内包EVを精製し、凍結保存しておく。それを半年後や数年後に本人に戻してやる、という方法(eNAMPT-EV Therapy; eNET)を考えています。それに関しては、非常に新しい技術を導入することでeNAMPT内包EVを安全に、高精度で分離する研究が必要です。

−−例えば、30歳の時のeNAMPT内包EVを取っておいて50歳になったら戻すということも可能なのでしょうか?

今井:可能です。eNAMPT内包EVは凍結保存で安定なので、決して夢の話ではないと思います。また興味深いことに、NMNとeNAMPT内包EVを与えた時の効果は完全に一緒ではありません。

−−どういうことでしょうか?

今井:NMNを与えると肝臓や視床下部でNADが上がるのですが、eNAMPT内包EVを与えても肝臓では上がらず、視床下部で上がるんです。組織特異性と言って、どの組織で働くかが決まっているようなのです。

もう一つ、NMNをどんどん与えるとNADになって、NADが使われると壊されてニコチンアミドに変化し、溜まります。ニコチンアミドを再利用してNMNに作り直すのにはNAMPTが必要となります。だから、両方を与えるとダブルの効果が出るはずという考え方です。それも数年のうちに実現されるのではないかと考えています。


プロフィール

今井眞一郎 卓越教授

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大大学院修了。医学部生の頃から細胞の老化をテーマに研究。1997年渡米、マサチューセッツ工科大学にて老化と寿命のメカニズムの研究を継続。2000年、サーチュインによる老化・寿命の制御を発見。2001年からワシントン大学助教授、2008年准教授、2013年から現職。老化•寿命のメカニズムの研究、およびNMNを中心とした抗老化方法論の研究を牽引し、2023年にワシントン大学からテオドール&バーサ・ブライアン卓越教授の称号を授与された。一般社団法人「プロダクティブ・エイジング研究機構」代表理事も務める。


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2024年06月23日

ハーバード大学教授「デビッド・シンクレア」が提唱、長寿遺伝子を活性化させるアンチエイジングサプリ

 美容業界で頻繁に使われている「アンチエイジング」という言葉。これは老化の進行を可能な限り遅らせることを目指す美容と医療の両方の要素をもった分野です。このアンチエイジングを化学的に研究するアンチエイジング医学(抗加齢医学)の世界で注目されているのがサーチュイン遺伝子。ハーバード大学医学部デビッド・シンクレア教授の研究の成果によって多くのことが明らかになってきています。

サーチュイン遺伝子とは「長寿遺伝子」または「抗老化遺伝子」とも呼ばれ、その活性化により生物の寿命が延びるとされています。最近ではインスリン抵抗性、糖尿病、ガンおよびアルツハイマー病などの老化関連疾患の病態を改善することも報告されています。

断食やカロリー制限、運動によって活性化するとされていますが、近年、それを活性化させる物質が明らかになり注目を集めています。

今回ご紹介する4種のサプリはこのサーチュインを活性化させる効果があり、アンチエイジングが期待できるのではないかと考えられており、米国を中心にこれらのサプリを摂取する人がどんどん増えています。

 

レスベラトロール

レスベラトロールは赤ワインやブドウの皮などに含まれる抗酸化物質として知られるポリフェノールの一種です。デビッド・シンクレア教授は、マウスを使った研究でレスベラトロールが長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子を活性化し老化を防ぐ、という発表をしました。その後、ワシントン大学セントルイス校医学部今井眞一郎教授など、他の研究者も研究を進めています。

現在では1日の許容摂取量は450r程度(体重60sとして)と言われています。

 

 

NAD+とそれの元となるNR(ニコチンアミドリボシド)とNMN(ニコチンモノアミドヌクレオチド)

NAD+(βニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)
1906年に発見された生細胞に見られる補酵素であるNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、たんぱく質と連携して、酸化還元反応で重要な役割を果たし、長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子を活性化させます。加齢に伴いその生成量が減少し「細胞核の損傷」や「ミトコンドリアの活性低下」が進むと考えられていて、体内の様々な臓器での老化が進む原因になります。アンチエイジング対策として、このNAD+を増加させるというテーマに世界の研究者の熱い注目が集まっています。

 

NMN(ニコチンモノアミドヌクレオチド)
体内に入ったNMNは肝臓に取り込まれ、NAD+「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」に変換されます。 NMNは正式にはマウスのみの研究結果で人に対する安全性、有効性については今後の研究に期待したところ。シンクレア教授本人は1日に500-1000rのNMNをサプリとして摂取しているそうですが、メーカー推奨容量を守りましょう。

 

NR(ニコチンアミドリボシド)
ビタミンB3の一種であるNR「ニコチンアミドリボシド」は、人間の体内で、ニコチンアミドリボシドキナーゼによりNMNへと変換され最終的にはNAD+が合成されます。 今まではマウスを使用した研究でしたが2018年に遂に人を使った研究でNRによるNAD+増加効果についての結果を発表しています。研究ではNRを8週間連続で投与したところ、1日500r投与された人が4週間後最大90%の体内のNAD+の増加量が観察されたそうです。増加量の安定性、また長期投与の薬効など課題が多そうですが、NRの摂取で人の体内でNAD+の増加が確認されたことはアンチエイジング医学界にとっては朗報であるといえます。ちなみに、一般的にサプリとしての推奨摂取量は1日250-500rと言われています[13]

NMNとNRは、どちらもNAD+を作る前哨体で、どちらに優位性があるかは所説あります。ただ、一般的にサプリの値段はNMNの方が高価です]

 

このようにアンチエイジングは我々の永遠のテーマであり、多くの学者、企業が競って老化のメカニズムの解明のための研究が日々進められています。まだまだ安全性、有効性など課題が多いのですが、近い将来サプリで老化予防をする日が来るのかもしれません。こうした動きを先取りしたい人は、この記事で扱ったサプリを試してみては?


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2024年06月09日

納豆に「オートファジー」促す成分 骨折予防にも

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高齢になって起こると寝たきりリスクが高まるばかりか、半年後の死亡率まで高まる股関節骨折(大腿骨頸部(けいぶ)骨折)率は「西高東低」という研究結果があるのをご存知だろうか。そもそも高齢女性に多いこの骨折の新規患者を1987年から2007年まで20年間分調べたところ、関西から九州にかけての地域で発生件数が多くなっていたことが判明したのだ。

関連する因子を分析すると、カルシウムやマグネシウム、ビタミンD摂取量との相関が認められたが、特に関西と関東で差があったのがビタミンKの摂取量だった[注1]

食品からとれるビタミンKには主にK1とK2の2種類があるが、更年期以降の女性の血中ビタミンK2濃度と股関節骨折率が相関し、しかも血中のK2濃度は納豆の摂取量と関係することを明らかにした研究もある[注2]。つまり、納豆消費量が関東以北に比べ低い関西で、骨折率も高くなっているのだ。

緑の濃い野菜や海藻で摂取できるのがK1。日本人の食生活を考えたときに、骨を守るK2摂取源としては納豆ほど効率的な食品はないと言っていい。


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日本人女性の都道府県別の股関節骨折率と1世帯当たりの年間納豆消費金額の関係

「日本人の食事摂取基準2015年版」では成人男女で1日150μg以上のビタミンK摂取が目安量になっている。そして、国民平均で1日231μgとっていることになっているので見かけ上は足りていることになる(2014年国民健康・栄養調査)。

しかし、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」では、骨粗しょう症の人で1日250〜300μgのビタミンK摂取が推奨されているため、致命的な骨折から身を守るという観点からすると国民健康・栄養調査の数字では足りているとはいえない。

そこで納豆だ。

通常の納豆は100gに、股関節骨折リスク低減が期待されるK2を600μgも含む。K2は大豆が納豆菌で発酵する過程で作られるが、発酵総面積が広いひきわり納豆では930μgにもなる(日本食品標準成分表2015年版)。

つまり、納豆なら、店頭で見かける約50gの1パックで骨粗しょう症改善量がとれるのだ。


●ビタミンK2は男性の元気ホルモンを増やすかも

さらに、ビタミンK2は股関節骨折だけでなく、加齢に伴い増加する男性ならではの疾病リスク低下にも恩恵がありそうだ。


米国では男性で発症数1位のがんであり、日本でも急増しつつある前立腺がんのリスク低下と関係があるという報告がある。ドイツのハイデルベルクで1万1000人強の男性を平均8.6年間追跡した研究では、特にK2摂取量が最も多い群は最も低い群に比べて進行性前立腺がんにかかるリスクが63%も低かった。欧州なので主な摂取源はもちろん納豆ではなく乳製品だったが。

なお、K1の摂取量と前立腺がんリスクに相関はなかった。また、K2には前立腺周辺の血管を守る作用もあるようだ[注3]。

40代以降の男性で、男性ホルモン・テストステロンが急激に低下することに伴い、気分が落ち込んだり、やる気が出なくなったり、イライラしたりするといった症状が出る男性更年期障害「LOH症候群」(加齢男性性腺機能低下症候群)にも、納豆が味方になってくれるかもしれない。

こうした期待を抱かせる研究を行っているのは東北大学のチーム。

ラットの研究だが、ビタミンKが精巣で炎症を抑制しテストステロンの正常な分泌を維持するという内容や、ステロイド産生を促して高齢ラットのテストステロン分泌能を改善するという報告を行っている[注4]。

同チームは、今年神戸で開催された第70回日本栄養・食糧学会大会でも、ビタミンK高含有食を与えた雄ラットでテストステロン産生が上昇したと発表している。ヒトでの試験が待たれるところだ。


●納豆には、ノーベル賞学説「オートファジー」を促す成分もたっぷり

優秀なビタミンK2源というだけでもうれしいが、さらにもう一つ、納豆には今脚光を浴びている話題のアンチエイジング成分もたっぷり入っている。

それは、細胞分裂や増殖に欠かせない成分で、炎症を防ぎ細胞の老化抑制に役立つとされるポリアミン。アミノ酸から体内でも作られる物質で、いくつか種類があるが、中でも注目度が高いのがスペルミンとスペルミジンという2種類のポリアミンだ。いずれも発酵食品には比較的多く含まれるが、一般的にスペルミンよりスペルミジンの含有量のほうがより多い。

2004年に発表された東京都健康安全研究センターによる研究では、赤ワインで0.16、白味噌で14.4、濃い口しょうゆで12.1なのに対し、丸大豆使用の納豆で平均56.1、ひきわり納豆では75.2(単位はμg/g)と、納豆で飛び抜けた量のスペルミジンが検出されている。なお、発酵食品以外にシイタケなどのキノコ類などにも多いようだ[注5]。

ポリアミンに関する一番ホットなニュースは、東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル賞を受賞した「オートファジー」、つまり、体の細胞が自己分解をしてがんや感染といった病気から私たちを守る働きを促すことで健康寿命延伸に役立つとして世界で研究が進められていることだろう。


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東工大の大隅良典栄誉教授

実際に、米国立老化研究所(NIA)は、現時点でアンチエイジングに寄与するエビデンスがある7つの方法の一つとして、オートファジーを促すスペルミジン摂取を挙げている。ちなみに、ほかの6つは、カロリー制限、断食、運動、レスベラトロール(ポリフェノール)、ラパマイシン(免疫抑制剤)、メトホルミン(糖尿病治療薬)だ。

うち5つはマイナス面も指摘されているが、メトホルミンとスペルミジンは特記すべき副作用も指摘されていない[注6]。

まだヒト試験データは十分とは言えないが、加齢に伴い体内での生成量が減る成分だけに、食品で補給する意味はありそうだ。

さらに、ポリアミンが活性酸素の害を減らしてストレス耐性を高めるとする考察や、更年期女性の大腸がんリスクを下げるとする研究などもある[注7]。

やはり、ビタミンK2同様、ポリアミンはアンチエイジングに欠かせない成分といえるだろう。

●ポリアミンは、寿命を縮める体内時計のずれまで直す

夜遅い時間のスマホ利用や、不規則な睡眠による体内時計の乱れは、がんなどの生活習慣病やうつ病などのリスクも高め、寿命を短くすることが明らかになりつつある。

ポリアミンはこうした体内時計の乱れを修正する働きでも注目されている。

そもそも私たちの体内時計は上記のような生活習慣の乱れ以外に、加齢によっても狂っていくことがわかっているが、ポリアミンを十分に補給すれば、時計遺伝子を正しく制御して体内時計を正しく動かせるかもしれないのだ。

ポリアミンレベルの低いマウスに食事で同成分を与えたところ、乱れた体内時計が修正されたという試験結果もある[注8]

女性だと平均して45歳くらいから更年期に入る。男性もまたしかり、と考えた方がいい。つまり、放っておくと心身が下り坂にさしかかる40歳を過ぎたころから、生活習慣の見直しを始めるのがお勧めだ。

ことに食事は、続けることで緩やかに私たちに影響を与えるので、まずは毎朝朝食に日本が世界に誇るアンチエイジング食品、納豆を加えてみてはいかがだろう。

今、中国や米国でも納豆に対する関心が高まりつつある。

しっかり朝食を食べることで体内時計がリセットされたり、肥満や糖尿病リスクが低下したりするという報告も多いので、そこに納豆を加えれば鬼に金棒だ。


[注1] Arch Osteoporos. 2009;4:71-7.
[注2]  Nutrition. 2001 Apr;17(4):315-21.
[注3] Am J Clin Nutr.2008;87:985-92
    Med Hypotheses. 2015 Mar;84(3):219-22.
[注4]  Food Funct. 2011 Jul;2(7):406-11.
    Lipids Health Dis. 2011; 10: 158.
[注5]  Ann Rep Tokyo Metr Inst P.H.2004;55
    Biosci Biotechnol Biochem.1997 Sep;61(9):1582-4.
[注6]  Cell 2014 June;157(7):1515-26
[注7]  Front Plant Sci. 2015 Oct 13;6:827.
    Am J Clin Nutr 2015;102:411-9
[注8] Cell Metab. 2015 Nov 3;22(5):874-85


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2024年06月02日

セラゴン社、老化介入候補物質SRN-901の予備臨床研究を無事に終了

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カリフォルニア州アーバイン2024年5月8日 /PRNewswire/ -- セラゴン・バイオサイエンス社は、同社の画期的な抗加齢候補物質であるSRN-901の予備臨床研究が完了したことを発表しました。この重要な研究はマウスを用いて行われ、SRN-901が老化や様々な健康指標にどのような影響を与えるかを評価するために行われました。

この研究の結果、SRN-901は治療対象の個体数において、これまでの研究では最も顕著な寿命および健康寿命の延長効果が得られたことが明らかになりました。300匹以上のマウスを対象に、SRN-901の効果を分子レベルで評価するために、全ゲノムトランスクリプトームシーケンシングが行われました。その結果、長寿に関連する多くの遺伝子の発現が顕著に増加し、老化と関連する遺伝子の発現が著しく減少したことが明らかになりました。また、代謝パネルの結果からは、若い生物学的年齢に関連する複数のバイオマーカーに有益な変化が見られました。

SRN-901の健康寿命への影響を評価するため、他の試験も実施されました。健康寿命とは、一生の間に健康が維持される期間を測る指標です。また、この研究では、身体的および認知機能も評価されました。運動負荷試験の結果、高齢マウスの持久力が著しく向上していることが明らかになりました。また、老衰スコアでは、SRN-901を投与された高齢マウスには著しい改善が見られ、治療群では腫瘍発生が有意に減少しました。

セラゴン・バイオサイエンスの研究チームは、この研究の結果に大きな期待を寄せており、さらなる分析を行って追加の知見を明らかにする予定です。補足的な分析が完了次第、これらの結果は公表される予定です。

セラゴン・バイオサイエンス社について

カリフォルニア州アーバインに本社を置くセラゴン・バイオサイエンス社は、革新的な科学によって人と動物の健康を改善することを目指す研究開発型のバイオ製薬企業です。セラゴン・バイオサイエンス社は、老化、代謝、遺伝子治療、バイオインフォマティクスの分野で最先端の科学技術を応用することに取り組んでいます。研究段階から消費者向け製品、臨床応用に至るまで、医学における最も重要な飛躍的進歩を人々に示すよう努めています。詳細は、www.seragon.comをご覧ください。

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